夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル


何故教科書に載らないのかが疑問。全人類が読むべき一冊。

収容所生活への被収容者の心の反応は三段階に分けられる。それは、施設に収容される段階、まさに収容所生活そのものの段階、そして収容所からの出所ないし解放の段階だ。


著者のヴィクトール・フランクルは1905年にウィーンに生まれた。フロイトアドラーに師事し、精神医学を学び精神科医となる。1939年、忌まわしき第二次世界大戦が始まった。そして彼はユダヤ人であった。

被収容者はショックの第一段階から、第二段階である感動の消滅段階へと移行した。内面がじわじわと死んでいったのだ。

この本は、強制収容所での極限の状況を、精神科医の目から分析したものだ。収容所に囚われた人々の心理状態を、刻々と記録。ほとんどの人間が悲惨な死を遂げていくなかで、著者は生きる意味を問う。


ユダヤ人でありながら、ナチス批判に囚われることなく、あくまで“人間”について考察に徹する。私たちは、彼らになりえた。彼らもまた人であった。「人生楽あれば苦あり」と言ったものだが、考えうる最悪の苦を体験した時、人はそれでも生きる意味があるのだろうか。たとえこの辛苦が終わらないとしても、生きる意味はあるのだろうか。同じく収容所で囚われているだろう家族は、生きているのだろうか。もし死んでいたとしたら、自分が生きる意味はあるのだろうか。


あの場所で“生と死”を分けたものは一体なんだったのだろうか。
生きる希望を与えてくれる本。


夜と霧 新版

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