グミ・チョコレート・パイン (2007)

高校2年生の賢三は、アンダーグラウンドなロックが好きな音楽少年。他のクラスメートを低俗な奴らと嘲り、「オレはアイツらとは違う」と思いながら、何をしていいか分からず、毎夜、親友二人と酒を飲んでは悶々と過ごしていた。ある日、薄暗い名画座で同じクラスの美甘子と会う。秘かに彼女に憧れていた賢三は、美甘子が自分と同じ側の人間であることを知る。自分の中で何かが変わった賢三は、親友二人とバンドを組むことに…。


ケラリーノ・サンドロヴィッチ監督特集@早稲田松竹に行ってきました。『1980』『グミ・チョコレート・パイン』の二本立てです。彼が監督・脚本を手がけている連続ドラマ「時効警察」は観たことがありますが、映画は初見でした。大槻ケンヂ原作の小説『グミ・チョコレート・パイン』を映画化した作品です。高校時代にこの小説を読み、「この主人公、まるっきり俺じゃん!」となったクチなので、それなりの思い入れを持って鑑賞。以下ネタバレ含みます。



 大人になった賢三と、鬱屈した青春を過ごした高校時代の賢三の話が交互に絡まって進んでいきます。この暗い青春は、クラスのメインストリームから外れてしまった男性には「そうだよ!そうなんだよ!」と、首を激しく立てに振ることができる内容だと思います。たとえば、オナニーするシーンなんかとてもリアルですね。勉強机に座って、ズボンとパンツだけ下ろしてるという感じ。あと、ノートに向かって自主企画映画の構想を描くシーンなんかも。ただノートに書くだけで、実際の行動には移せず妄想を繰り返すこととかね。


 「普通のやつら」とは違う、という思いを抱きながらも、本当に普通ではなく、ブルマ泥棒を繰り返し、エキセントリックで危ないヤツである「山之内」とは一緒にされたくない。メインにもオルタナティブにもなれない、そんな葛藤を演じるのが主人公なんですが、いまいちそういった苦悩が描かれてなかったなー、と思います。バンドを組んだ暗い仲間たちから外れてしまった気持ちとか、山之上に対する劣等感をもっと観たかったです。


 賢三の友達であり、バンドメンバーとなるカワボンとタクオの配役はナイス。特にタクオは良いですね。気持ち悪いです。美人教師を見つめるタクオの視線が、この映画のベスト演技でした。映画の超重要人物である、賢三の憧れの人物、山口美甘子を演じた黒川芽衣ですが、彼女も良かった。体が非常に肉感的(笑)で、高校生男子の妄想が膨らむわー。ただキャラとしては、もっと奔放な女性で、学校からも一目置かれる存在、という方が良かったんじゃないでしょうか。クラスに溶け込みすぎて、普通とちょっと違う、という点が無かったのが残念です。

 
 大人になった賢三が、アイドルとなった山口美甘子から手紙をもらう、っていう設定は映画だけのもので、これがこの映画最大のミスだと思います。数十年後に片思いをしていた女から、手紙をもらうってすごく陳腐だと思いました。映画は小説のグミ編とチョコ編のはじめで終わりなんですが、その後のチョコレート編、パイン編では賢三がどん底に突き落とされるような話が進んでいき、それこそが自分にはリアルに感じられ面白かった点だったので、映画の「実は山口美甘子も、賢三のことを気にかけていた」っていうニュアンスが自分には合わなかったです。


 小説目線で、やや主観と食い違って粗探しになってしまいましたが、映画として面白かったです。女性でこの映画を支持している人がいたら、どういった点が面白かったのかぜひ聞いてみたいですね!


(演奏指導にトクマルシューゴの名前がありましたが、山之上の超絶ギターを弾いてるのがトクマルさんかな・・・)



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