ヒトラー 〜最期の12日間〜

1945年4月20日、ベルリン。ソ連軍の砲火を避けるために、ヒトラーブルーノ・ガンツ)はドイツ首相官邸の地下要塞に退却していた。すでに正常な感覚を失っていたヒトラーは部下に実現不可能と思える作戦を熱く語っていた。


戦争映画は数あれど、敗者の側から、それも密室劇を描いた作品は珍しい。

戦争にはどうしようもない美しさがあると思った。美化しているわけじゃない。極限の状況の中で、周りの仲間や家族がバタバタと殺されていったなら、自分も玉砕しようという気持ちになるのは理解できる。悲劇に身を投じる自分への陶酔感があり、それはどうしようも無い運命に左右されてしまう人間が持つ悲哀を、本能的に回避するための防衛手段なのかな。善悪関係無しに。どうしても感情は善悪を越えてしまう。



それを美と呼ぶかどうかは、人それぞれです。



戦局が悪化し、もはやどうしようもない状況になった後で、ヒトラーは架空の戦力を妄想し、将軍たちの怠慢を怒鳴りつけ非難する。僕にはこれが「人間味のあるヒトラー」に写った。個人としては、敗戦を認め、愛する者たちに脱出を薦めるヒトラーだが、総統ヒトラーとしては、自分の責任を国民や将軍になすりつけ、妄想に狂った老人として描かれている。しかし、自分の責任で、何百万人という人間の運命を動かしてしまった責任に立ち向かえる人間など、果たしているだろうか。自分の防衛本能で全体を最悪の状況に巻き込んでいってしまうというのは悲劇としか言いようが無いな。


個人的には最高の戦争映画でした。

ヒトラー?最期の12日間?エクステンデッド・エディション<終極BOX> [DVD]

ヒトラー?最期の12日間?エクステンデッド・エディション<終極BOX> [DVD]